「雷撃防護の基礎知識」
The "Grounding" for Lightning and EMP Protection
第2章:"Ufer"型接地
●「Ufer」型接地
新たなサイトを建設する場合、一部のラジオ中継局を除いてはUfer型接地という方法が用いられます。この接地技術は、接地システム全体のインピータンスを大幅に減少させるものです。
この技術の名前の由来となっているUferという人は、第二次世界大戦中のアメリカ陸軍でコンサルタントとして働いていた人物です。地下水の利用が望めず降水量の少ないアリゾナ州のフラッグスタッフにおいて、陸軍が地下爆薬庫を建設を計画していた当時、Uferが提案したアイデアは、スチール製の補強の棒を基礎のコンクリート中に埋め込んでアースとするものでした。様々なテストケースの結果、4AWG以上の規模の導体をコンクリートの基礎の中に埋め込んで地面に直接接触された場合に、通常よりも抵抗の低い接地条件になることが判明しました。これはコンクリート内部に通る導体の長さが重要で、それぞれの方向に3mずつ伸びた6mのシステムにおいて、地面の抵抗値が1m当たり1,000Ωである条件で、トータルで5Ωという抵抗値を実現しました。
●Ufer型接地のテスト
接地システムの最も重要な試験は実際の雷撃にさらされる試験です。この試験の目的は、Ufer型の基礎において、雷撃がコンクリート内部の水分を一気に蒸発させ、基礎が割れてしまう現象の有無を検証するものでした。試験の結果は、導線が十分長く(最小で6m)、コンクリートの側面と底面から10cm以上離してあれば、まずこうした破壊は起こらないというものでした。
(長年の経験で、筆者は一度だけ雷撃によると思われる基礎のコンクリートの亀裂を目撃したことがあります。Ufer型接地は非常にお奨めできる接地法ではありますが、これさえあれば完全というものではありません。Ufer型接地には必ず、放射状に敷設された接地ロードを用いなくてはなりません。コンクリートの発熱が、限られた領域に大電流が集中した時に大きくなることをご存知の方は、この接地方法に不安を感じる方があるかもしれません。しかし、電流を多く逃そうとして基礎の表面積を大きくすると、流れうる電流の密度は下がる関係にあり、基礎のみで電流を処理する方法には限界があります。鉄塔のアンカーボルトは全てコンクリートの内部にあるため、もし接地システムが貧弱なものであると、ボルト周りの電流密度が高くなり、基礎のコンクリートが破壊されてしまいます。コンクリートの鉄筋にアース接続がしてさえあれば、表面積が増大して電流密度が減少します。またこの接続は、後述のように基礎の腐食も同時に減少させることができます。)
Ufer型接地は建造物の基礎やコンクリートの床、鉄塔の基礎や支索などに用いることができます。
Ufer型接地は、コンクリートの中に円形の格子を埋め込むか、鉄の補強棒(REbar)を用いることで構築することができます。
「アークの温度は非常に高く、また極めて狭い領域に発生するので、コンクリートに亀裂を生じたり炭化したりする原因になる。導体同士の接続が弱いと、その継目でアークが飛ぶ原因になるため、その構造は強固なものでなくてはならない」という理由で鉄塔の基礎は強固に作られますが、実際はこの根拠は正しくありません。
「…導線の接合は驚くほど有効な電気的結合であることが知られており、弱い結合だと雷撃などの非常時には切れてしまうと考える人もおられるかも知れませんが、実際は多くのこうした継目が有効に機能しているのです。」(IEEEセミナーノートより引用)
鉄塔の基礎で大量の銅線をコイル状にして使用することは、コンクリート亀裂を生じさせる原因になり、時間が経てば基礎の格子に腐食が生じる結果になります。こうした現象はコンクリートのpHの値によって変化します。放射状のアース線や接地ロッドのようにコンクリートの外部で銅の導線を用いた場合にはこうした問題はおきません。表面積の体積に対する割合によるのですが、放射状のピグテールのようにコンクリート内部にある導線の延長が短い場合には、鉄塔の30余年の寿命から考えると、Rebarの性能に大きな影響を及ぼすことはありません。
●REberの長さの選定
REberの最小長さはコンクリートの種類(水分量、密度、電気抵抗)によって決まります。また、埋設されているコンクリートの必要とされる表面積は、地面の地質、水分量、電気抵抗、ロッドの長さや雷撃時の電流規模によっても変化します。このうち雷撃時の電流規模は予測の難しいものです。発生確率50%の雷撃で18kAですが、100kAや200kAといった巨大な雷撃が発生する確率も存在します。
上に示すのはREberからどれだけの電流がコンクリートに流れたかということを30cmあたりで示したものです。サージ電流の総量をこの表にしたがって配分すると、接地用導体に流さなくてはならない電流を求めることができます。格子3次元的な周囲の長さがこの値には影響してきます。
一般の雷撃防護システムには、少なくとも60kAに耐え得る設計が必要です。この値は90%の雷撃に耐えることができます。しかし、Ufer型接地を導入する時には放射状の接地システムを併用するようにしなくてはならないことを忘れてはいけません。
●Ufer型接地を左右するパラメーター
Ufer型接地を左右する要因は単純です。
コンクリートは降雨や雪解けから、15〜30日もの間、水分を閉じ込めています。コンクリートが水分を吸収する速度は速く、逆に放出する速度は極めて緩慢です。コンクリートの水分量、ミネラル分(石炭など)、pH値(通常では7以上)などのパラメータは、導電性に直接関係のあるイオンの量を表します。コンクリートが土に接している表面積が大きいとそれだけ地面へ流すことのできる電流は大きくなります。
●Ufer型接地のみの使用は禁物!
Ufer型接地は必ず、放射状の接地システム(可能ならば接地ロッドも)に接続して使用して下さい。もっとも好ましい方法は2本のピグテールをREbar構造に接続するものです。一本はコンクリートから地中で放射状ラインに接続します。もう一本はダブルナットで鉄塔のアンカーボルトに接続するか、ポリフェーザー社のTKシリーズランプを介して鉄塔に接続します。これよりも大規模な鉄塔にはTKシリーズのラインナップであるS.S.ホースクランプを御用意致しております。
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