「雷撃防護の基礎知識」
The "Grounding" for Lightning and EMP Protection
第20章:パラボラアンテナシステム
●「Ufer」型接地
パラボラアンテナが取り付けられているポールの多くは、基礎がコンクリートで固められています。典型的な場合として直径10cmのポールが、その基礎である深さ約1m50cm、直径45cmの鉄筋に電気的にも接続されている場合、「Ufer」型接地として良い接地性能を示します。(「Ufer」型接地の詳細は2章を御参照下さい)土壌の電導度が良い場合(100Ω/m以下)はこれだけでアンテナの接地としては十分です。埋設した接地ロッドに銅製の接地ワイヤーを介して接続すれば、なお一層良い結果が得られます。このワイヤーは#1/0ゲージよりも太いものを用い、地中20cmよりも深いところを他の接地ワイヤーから60cm以上離して埋設して下さい。パイプへのワイヤーの接合は熱による溶接で行って下さい。こうすることで、電気的接続と同時に機械的接続も得られることになります。熱溶接は異なる金属を簡単に、しかも確実に接合する有効な方法です。
「Ufer」型接地は、4本の長さ3mの接地ロッドを、6mおきに深さ6mに埋設するものです。はじめの1本はアンテナの直下に埋設し、2本目は建屋の方向に6m進んだ地点に埋設します。ケーブルが建屋に入射する地点にロッドを追加すればされに良い結果が得られます。
地盤が岩石質などの場合で地表に垂直にロッドを埋設することができない場合、放射状の接地回路が必要になります。3m以上で幅4cmの銅のストラップを、アンテナ基部から放射状に設置し、総延長にして15m以上になるようにすることで有効な接地が得られます。ここで、可能ならばストラップは地中に埋設することが望ましいといえます。また、放射回路の中心部は建屋の電源回路のアースと接続します。
砂質の地盤の場合にも同様に放射状の接地回路を構築します。この場合、長さ3mの接地ロッドを3mおきにそれぞれの放射路に埋設します。
こうした設置方法は、そのサイトがある場所の条件によって変化します。最も望ましい方法はその都度土壌の電導率を測定し、接地システム全体の抵抗が5Ωになるようにシステムを設計する方法です。そうした接地回路を構築した上で適切なI/Oプロテクターを用いることで、落雷が直撃した際でも機器を防護することができます。
システムには以下のI/Oが存在します。
- 1:120V交流電流
- 2:RF同軸ケーブル
- 3:直流極性コントロール
- 4:アクチュエータ/指向制御ケーブル
電力ラインのI/O防護には2通りあります。
雷撃がアンテナから遠く、建屋から近い場所に起きた場合、サージは直接機器の方に流入します。また、パラボラアンテナに直撃があった場合、電流が建屋の方に流れようとするため、ラインの電位が上昇して励起状態におかれ、機器にダメージを及ぼします。こうしたダメージを防ぐためにプロテクターが必要になります。どのような種類のプロテクターをいくつ、どこに設置したら良いかということはサイトによってそれぞれ異なります。
壁面に設置されたプロテクターは、アースに達する際に、電力ラインのインダクタンスだけでなく分電盤からのラインのインダクタンスの影響を受けます。こうしたインダクダンスの影響から、雷撃サージの早い立ち上がり時間によって電圧が誘起され、良いアースとして機能することができなくなってしまいます。このため、理想的なアースを得るためには2個のプロテクターを設置する必要があります。
1個目は交流240Vの電力幹線のブレーカーボックスに直接取り付ける電力ラインプロテクターです。このプロテクターは電力ラインを通って建屋に流入しようとするサージを防ぐことができます。2個目は装置のシャーシに直接設置するものです。このプロテクターは、建屋にケーブルが入射する地点のすぐ近くで起きた雷撃を建屋に流入させることなく、接地ロッドに流す役割を果たします。
●RFケーブルの防護
次にRFケーブルのI/Oについて述べることにします。3m程度の同軸線に流入したサージは、両端に接続されている機器に障害を与えます。ここで必要になるプロテクターは、LNBレベルの動作電圧を持ち、450〜1450MHzの周波数帯で低損失、高VSWRである同軸プロテクターです。(ポリフェーザー社 品番IS-SB75F IS-DB75F)
極性ローターと極性スイッチもサージのエネルギーを機器に伝達する経路になる恐れがあります。これらのラインとアクチュエーターも共にプロテクトを行なう必要があります。
このシステムも2個のプロテクターが必要になります。一つはアンテナに、もう一つは建屋に接地し、双方共にアースに接続します。
これらのプロテクトで、I/Oラインの接地は完了しますが、給電ラインに雷撃が直撃した場合、LNA/LNBラインにダメージが及ぶ恐れがあります。雷撃が直撃し給電ラインが溶融してしまうのを防ぐためには、アンテナ後部に長さ1mのロッドを取り付け避雷針にします。アンテナにグリースで潤滑されているジョイントがある場合、接地回路として同軸線を用いる必要があります。この場合#2ゲージの銅線を、他の接地システムと接続されている「Ufer」型接地(アンテナポール基部)に接続するのがベストです。
この避雷針はアンテナと給電ラインを保護するのに十分な範囲をカバーします。もし長さ1mの避雷針をアンテナポールに取り付けることができない場合、2本の長さ3mのロッドを溶接して避雷針として使用します。この溶接したロッドの下部を地中に埋設し、接地システムとアンテナ基部の「Ufer」型接地の双方に接続します。ロッドの頂部は、アンテナと電源ラインの最も高い地点よりも更に60cm程度高いところに伸ばす必要があります。
ここではパラボラアンテナのプロテクトで必要なことを述べました。他の章でもこのようなサイトに有用な技術が記述されています。本書に書かれている技術を用いれば、機器が雷撃によって破壊される危険を大幅に減少されることができます。
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